西村さんの週末

伝説のちまきをつくる

川西市黒川地区ではちまきをカシワとヨシの葉で餅を包みます。
旧暦の端午の節句に供えられる「ちまき」。餅の部分は「うるち米」と「もち米」。ついた餅は、たわらの形に整えられヨシの茎で刺していきます。黒川の今西さん宅ではそれをカシワの葉とヨシの葉で巻いて、イグサで縛ります。黒川で今もこのやり方でちまきをつくっているのは今西さんだけのようです。 「世界一のちまき博士」と自称の服部保さんは全国のちまきを調べられ、ナラガシワとヨシの葉を巻く地域は黒川と宝塚だけだろうと考察されました。

畦野物語(うねのものがたり)の「ちまき」の一節

(フィクションです)
「ちまき」は現在ではチマキザサ、オオバザサ、チュウゴクザサといった大型の葉を持つササの葉で包みますが、その原型は茅(ち)、すなわちチガヤの葉で団子を巻く「茅巻き」ことからつけられた名称です・・・・

ササの「ちまき」しか食べたことのない藍と柚は驚きましたが、すぐ近くの平野村出身の凛にとってはツルヨシの「ちまき」は子どものころを思い出させるなつかしい「ちまき」です。早速采女らは「ちまき」にきな粉や塩および村人達が持ってきてくれた甘(あま)葛(づら)をつけて食べてみました・・・

凛は食べながらふと思い付きました。ツルヨシだけではなく、自分達が採りに来ている神聖なカシワも使って二重に包んだ「ちまき」を作れば、それは香りも、味も良い他の地域には見られない神聖で特別な「ちまき」となるのではと。  
村人達は早速、凛の提案した新しい「ちまき」を寺の台所で作ります。もちを1枚のカシワの葉でくるみ、その上をツルヨシの葉数枚で包み込んで、イグサで巻き締めて、蒸すというものです。新しく作られた「ちまき」を村人達と采女は食べてみました。新しい「ちまき」にはカシワの葉の芳しい香りが移り、霊力が増したようです。村人達は新しい「ちまき」にたいへん喜び、以後当村の「ちまき」にはカシワとツルヨシを使うことを定めとしました。
カシワとツルヨシの「ちまき」はその後この村より、大神郷を経て猪名川上流域全体(川辺郡・能勢郡)に、さらに隣接する武庫川上流域(武庫郡)にも広がりました。この伝統「ちまき」はごく一部ですが、現在も作られています。

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